生活保護の条件と申請前に知っておきたい受給金額をわかりやすく解説

生活保護の条件

生活保護は「病気やケガで収入が断たれてしまった」「収入が少なすぎて困窮している」など、生活に困っている人を助けるための制度です。

生活に困っている日本国民の誰もが申請する権利があり、要件を満たしていれば最低限度の生活を保障するための金額を受け取れます。

令和3年に厚生労働省が実施した「生活保護の被保護者調査」では、約164万世帯が受給世帯の対象となっており、実に204万人以上の生活保護受給者がいるとのデータも出ています。

一見多いように見える数値ですが、生活保護受給者は日本国民全体の約1.6%にしか満たない数字で、「本当に困窮しているのに生活保護を受給できない」と嘆く人がいるのも事実です。

誰もが申請できるものの、生活保護を受給するには国が定める条件を満たしている必要があります。

そこで本記事では生活保護を受けるにはどのような条件を満たすべきなのかをわかりやすく紹介。

いざ生活保護が必要になった場面で、受給の可能性を上げる方法について解説します。

生活保護とは生活に困っている人が保護費を受給する権利がある制度

生活保護とは、生活に困っている日本国民が保護費を受給する権利があると定めている制度です。

生活保護法では、制度の目的や保護対象について以下のように記載しています。

第一条 この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。

第二条 すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護(以下「保護」という。)を、無差別平等に受けることができる。
引用元:生活保護法

条文で出てくる日本国憲法第25条では、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定めており、年齢や環境によらず、生活に困っている日本国民は誰でも無差別に受給する権利があるとしています。

目次

生活保護を受給する条件は5つ!収入が少なく他に頼れる制度や親族がいない点がポイント

生活保護が受けられるのは、以下の5つの条件を満たした場合です。

  1. 現在の収入が最低生活費以下である
  2. 他の保障制度を利用できない状況である
  3. 親族や身内に頼れない状況である
  4. 病気や怪我によって働けない状況である
  5. 売却できる資産がない状況である

生活保護は誰でも申請できますが、財源は無限なわけではなく、申し込んだら誰でもすぐに受給が決まるわけではありません。

「収入が少ないから生活保護を受給できる」と考える人は多いですが、実は収入以外でも細かな条件が定められています。

生活保護を受給するためのそれぞれの条件について、詳しく見ていきましょう。

条件1:最低生活費以下の収入である

生活保護の受給条件として大きく影響するのが、収入がいくらあるかです。

もちろんですが、国が定める収入の基準(最低生活費)を超えている人は、受給の対象となりません。

ただし完全に無収入である必要はなく、実は仕事や収入があっても最低生活費以下であれば条件はクリアしています。

例えば、介護により週に1回のバイトでしか働けない人、年金の支給額が少ない1人暮らし高齢者なども、収入が最低生活費を下回っていれば対象です。

生活保護がもらえるかを左右する基準!「最低生活費」とは?

最低生活費とは厚生労働大臣が定めている「最低限度の生活を送るために必要な収入」の基準で、住んでいる地域や年齢、世帯人数によって金額が異なります。

衣食や日常の生活必需品の購入、光熱費として最低限必要な生活扶助基準額に加え、住んでいる地域に応じた住居費用(住宅扶助)を加算した金額が基本です。

※さらに障害者世帯や母子世帯などは追加で加算されます。

例えば東京23区住まいで生活保護が受けられる収入の目安は以下のとおりです。

  最低生活費
73歳1人暮らし 127,920円
30歳1人暮らし 130,010円
78歳・73歳の夫婦 180,150円
40歳・35歳の夫婦 187,490円
32歳母・7歳・5歳 259,310円

あくまでも東京都23区内に住んでいる人の参考金額なため、地方に住んでいる場合もう少し金額は低くなります。

具体的に自身の収入が最低生活費以下となるかは「生活保護はいくらもらえる?金額と計算方法をわかりやすく解説」で確認可能です。

条件2:公的な保障制度をすでに活用している

国には生活保護以外にも社会保障制度があり、生活保護はいわば最後の砦ともいえる制度です。

そのため生活保護を受ける前に、社会保障制度をすでに活用しているかどうかは必ずチェックされます。

生活保護を受給する前に活用できる制度があれば、前もって制度を案内されることが多いでしょう。

代表的な国の保障制度

  • 年金:高齢者・障がい者世帯
  • 傷病手当:現在就労していて病気やケガにより働けない人
  • 失業保険:急な失業で職を失った人

例えば年金だけでも以下の種類があり、該当していればそれぞれの状況に応じて社会保障が受けられる可能性があります。

概要
老齢年金 国民年金・厚生年金を納めていた人が65歳から受け取れる「年金制度」
遺族年金 国民年金・厚生年金を納めていた人が亡くなった場合に遺族が受け取れるお金
障害者年金 病気やケガによって働けなくなったときにもらえるお金

生活保護を受給している人の約55%が高齢者、約30%が障がい者・傷病者世帯となっていますが、生活保護以前に上記のような年金を利用できる場合もあります。

また仕事をしている場合は、病気やケガなどで休む場合にもらえる傷病手当、職場での事故が原因なら労災保険を利用可能です。

仕事を辞めて仕事を探している最中であれば失業保険を利用でき、自己都合退職なら2ヶ月、倒産など自分の意思ではない退職なら最長1年間失業手当がもらえます。

このほか、自己都合ではない退職や給料減少などで住居が無くなりそうな人なら、住居確保給付金で家賃の支払いを一定期間免除できる可能性も。

住居確保給付金は原則として3ヶ月(最大9ヶ月)にわたって、家賃相当額を自治体から家主に支払う制度で、返済の義務もありません。

一時的に生活に困っているなら貸付制度を勧められる場合もある

行政には給付金ではなく「貸付」の形で生活を支援する仕組みもあり、一時的に困窮していてすぐに収入が復活しそうな人は生活保護より優先して貸付制度を勧められます

返済する義務はありますが、給付金や生活保護よりも幅広い条件となっているため、誰でも利用しやすいのが特徴です。

また行政の貸付は低金利や無利子なものが多く、民間の金融機関からお金を借りる方法よりも返済時の負担が軽いメリットもあります。

困窮時に利用できる貸付制度は以下のとおり。

  概要
生活福祉資金貸付制度 ・高齢者世帯、低所得世帯、障害者世帯を対象に生活資金を貸し付ける
・連帯保証人ありだと無利子、無しだと金利は年1.5%
母子父子寡婦福祉資金貸付金制度 ・20歳未満の児童を扶養している、配偶者のいない人が対象
・さまざまな分野の貸付があり、事業性資金の貸付も行っている
求職者支援資金融資制度 ・求職者支援制度で職業訓練受講給付金を受給する予定の人が対象
・ハローワークで貸付の理由が正当である、返済の意思があると認められる必要がある

その他、生活保護の申請をする前に国からお金を借りる制度はたくさんあります。

生活保護の申請前に、貸付や一時的な給付金で乗り切れるかどうかもよく考えてみましょう。

条件3:経済的に頼れる家族・親族がいない

生活保護の相談に行くと、家族や親族に頼れる人はいないかどうか必ず確認されます。

金銭面で補助を受けられる場合や、家族の扶養になれる場合は、生活保護よりも家族の扶養になることを促されるケースも。

扶養義務があるとされる親族の範囲は、民法では三親等以内の親族とされていますが、例えば熊本県では以下のように定めています。

ア 絶対的扶養義務者
(ア) 生活保持義務関係にある者
夫婦間又は親と未成熟の子(中学3年以下の子)
(イ) 世帯員の親子
(ウ) 世帯員の兄弟姉妹
イ 相対的扶養義務者のうち次に掲げる者
(ア) 現に当該保護者又はその世帯に属する者を扶養している者。
(イ) 過去に当該保護者又はその世帯に属する者から扶養を受ける等特別の事情のある者。

引用元:熊本県

扶養義務があると判断された親族には扶養照会が行われ、仕送りなど援助ができないか連絡がいきます。

ただし、家庭の事情によりどうしても連絡してほしくない場合や、相手に扶養義務が果たせないと判断されれば扶養照会は行われません。

扶養照会がなくなるケースとして、例えば以下のようなケースが該当します。

  • 専業主婦(主夫)、未成年、70歳以上の高齢者など労働収入がない人
  • 扶養義務者に対して借金を重ねている
  • 相続問題などで対立している
  • 10年以上音信不通
  • DVや虐待があった

参照元:厚生労働省

特にDVや暴力によって家族から逃げてきているといった、扶養照会を行うことで危険な目に合う可能性がある場合は、慎重に状況を聞いてもらえます。

Q.生活保護を申請したら親族中に役所から連絡がいって扶養を強制されるのではと心配です。

A.すべての親族に連絡がいくわけではありませんし、特にDVで逃げてきている場合は福祉事務所は連絡をしません。夫の暴力から逃れてきた母子の場合は、夫に対して扶養照会をしないとされています。こういった事情にあてはまるときには、生活保護を申請した際、扶養照会をしてもらわないように伝えましょう。
引用元:生活保護について|シンママ福岡応援団

なお緊急のケースを除き、上記のような理由で扶養照会を拒否する場合、本当にそのような状態なのか相手にバレないよう事実確認は行われるので、虚偽報告はやめましょう。

交流のある家族がいても生活保護は受給できる?

生活保護の受給を検討している人の中には、金銭面で子どもや親に迷惑をかけたくないなどの理由で援助を求めない人も一定数います。

扶養照会を免れる例はいずれも関係性が破綻しているケースばかりでしたが、逆に良好な場合でも扶養が困難なら生活保護の受給は可能です。

例えば、厚生労働省では以下のケースでも生活保護受給を不可能とはしていません。

Q.8 両親を介護するため、両親と同居したいのですが、両親だけ生活保護を受給することはできますか。
A.8 生活保護制度は、原則として世帯を単位として保護を決定・実施することとなっています。
ただし、御質問のような場合には、御両親だけ保護を受けることができる場合があります。お住まいの福祉事務所にご相談ください。

引用元:厚生労働省

実際に厚生労働省の調査では、扶養照会を行って実際に親族からの経済援助に繋がった人は約1.4%程度しかいないデータもあります。

参考:生活保護申請を阻む「扶養照会」の壁

受給のための原則はありますが、内容次第では個別に対応してくれる場合もあるので、まずは相談に行くことが大切です。

条件4:病気や障害が理由で働けない

生活保護は、働きたくない人が楽してお金を得る制度ではありません。

病気やケガ、障害があって働きたいのに満足に働けない、他に頼れる人がいない状況で介護をしなくてはならず働けない場合に条件を満たします。

病気や障害にもいろいろあり、身体的な病気やケガ以外でうつ病などの精神疾患も対象となります。

実際に生活保護受給者で医療扶助を受けている人の22.7%が「精神・行動の障害」を患っており、割合として最も多くなっています。
参考:生活保護の医療費扶助の現状について

精神疾患で見た目には元気で働けそうな場合は担当者に判断を任せるのは難しいです。

どんな病気であっても、医師の診断書など働けないことを証明する書類があると手続きもスムーズに行えます。

条件5:売却できる資産がない

生活保護は、お金にできる資産はすべて売却などして生活費に充てていることが前提です。

例えば使っていない土地家屋、車はもちろん、宝石・貴金属類、高級ブランド品、スマホやテレビなど換金性の高い最新家電は売却の対象となります。

また、返戻金のある生命保険や学資保険、医療保険も資産とみなされ解約を求められるので注意しましょう。

最低生活費以上の預貯金がある場合、まずはそれを切り崩して生活費に充てるよう指導され、生活保護の申請は却下されてしまいます。

全くのゼロにする必要はありませんが、上限は最低生活費の半分程度までが目安です。

金融機関調査により貯金の実態は把握でき、資産隠しは不正受給と判断されるので決して行わないでください。

持ち家や車は条件付きで所有が認められる

持ち家や車は必ず手放さなくてはいけないわけではありません。

日常に必要不可欠であったり、資産価値がなく売却が現実的ではないと判断されれば所有が認められます。

例えば、持ち家なら駅前の利便性がいい場所なら売却の検討が必要ですが、買い手がつかなさそうな不便な土地なら売却は現実的ではありません。

車は通勤や介護の送迎など日常に欠かせない場合、資産であっても所有が認められます。

生活保護受給者の自動車保有を原則禁止とする制度の見直しを求める声が出ている。交通インフラが乏しい地方では「生活の足」として車が欠かせず、保有が死活問題の受給者も多い。要件を満たせば保有を認められる場合もあり、支援団体は「すぐに諦めないでほしい」と呼びかける。
引用元:生活保護受給者に車の所有認めて 制度見直し求める声

しかし生活保護費で借入金の返済を行うことは認められていないため、原則としていずれのローンも完済済みであることが所有の条件となります。

申請前に知っておきたい生活保護の審査に通りにくくなるケース

明日の生活に困るような状況であっても、生活保護の申請をしたら難色を示されたり、最悪の場合却下されたりしてしまう場合があります。

国民の生活を守るための生活保護制度ですが、財源は税金のため保護の必要性は慎重に判断され、厳格な審査が求められるからです。

特に注意したい、審査で不利になる5つの条件について見てみましょう。

  • ローン未完済の持ち家や借入金がある
  • 精神病が疑われるが診断書をもらっていない
  • ケースワーカーの調査で嘘の報告をする
  • 母子家庭などで他の保障制度が利用できる
  • 労働可能だと判断される

ローン未完済の持ち家や借入金がある

生活保護費は住宅ローンや車のローンなど、現在借りているお金の返済には充てられません。

住宅は資産であり、住宅ローンの返済は資産形成にあたると考えられるからです。

マイカーローンやカードローンなど他の借入金についても同様の考え方で、生活保護費からの返済は認められていません。

そのため、毎月の返済が必要な状態で生活保護を受給するのは現実的でなく、まずは物件や車の売却、多重債務なら債務整理や自己破産を先に勧められます

もしローン未完済の持ち家に住みながら生活費を得たい場合は、生活保護の検討前に、自宅を売却しても住み続けられる「リースバック」や「リバースモーゲージ型住宅ローン」への借り換えも検討してみましょう。

精神病が疑われるが診断書をもらっていない

「うつ病っぽくて働けない」など、自己診断で病名を付けて保護の申請に行っても、虚偽か本当か判断が難しく、審査が長引くケースが見られます。

精神病の場合はその日によって調子の良し悪しが変わったり、一見健康そうに見えたりするので、担当者によっては働き口を探すよう促されるケースも少なくありません。

窓口担当者は医療従事者ではなく病気の診断はできないので、病気であるならその証拠を持って行かないと簡単に受給に向けて動いてくれない点に注意しましょう。

ケースワーカーの調査で嘘の報告をする

生活保護の申請をすると、資産や生活環境、就労の可否などさまざまな項目について調査する「ケースワーカー」が担当に付きます。

ケースワーカーによって家庭訪問が行われ、不要と思われる資産の売却をすすめられたり、家賃が高い物件なら安いところへの引っ越しを提案されたりするので素直に受け入れましょう。

もし生活保護受給に不利になりそうだからと嘘をついたり、条件は飲めないと指導に対して反発的だったりすると、審査に落ちやすくなってしまいます。

資産や収入を隠して審査に通ってしまうと、後々バレた時に不正受給扱いされて保護費の支払いが打ち切りとなるので、不利になりそうでも正直に説明するようにしてください。

母子家庭や求職者など他の保障制度が利用できる

生活保護は、利用できるもの・ことをすべて利用した上で生活できない人が申請できる制度です。

生活保護より先に国の給付金や貸付制度の利用が優先されるため、制度の対象となる求職者や母子家庭は状況によって生活保護の申請を渋られる可能性があります。

貸付の場合は返済が前提となるため、収入を得ることが困難なら「求職中」「母子家庭」だけを理由とせず、他の複合的な事情も丁寧に説明しなくてはなりません。

情で訴えるのではなく、論理的に筋が通っているかどうかが大切です。

労働可能だと判断される

職を選り好みしているだけで、家庭状況や体調面で十分に労働可能だと判断されると「もう少し職探しを頑張ってみましょう」と申請を見送られやすくなります。

労働可能な人の場合は、生活保護ではなく生活困窮者自立支援制度を利用して就労や家計改善サポートを受ける方が向いている場合も。

衣食住に困る人に対しては、一時生活支援事業として一時的に衣食住の提供を受けられるので、生活保護が難しそうな人は検討してみてください。

生活困窮者自立支援制度の窓口は社会福祉協議会や自立支援センターとなり、基本的には生活保護の窓口とは異なります。

各自治体に窓口が設置されているので、労働できると判断されそうな人は一度相談に行ってみましょう。

>>厚生労働省|令和4年度自立相談支援機関窓口情報

生活保護はいくらもらえる?金額と計算方法をわかりやすく解説

生活保護費をいくら受け取れるかは、住んでいる地域や年齢、世帯の人数などさまざまな情報を加味して計算されるので、人によって異なります。

生活保護の金額は、国が定める最低生活費から収入を差し引いた分となるため、無収入の場合は最低生活費の上限金額が生活保護費となる計算です。

生活保護費の計算は非常に複雑ですが、順を追って計算すれば目安の金額を算出できます。

具体的に生活保護の内訳となる金額や、算出方法について詳しく見てみましょう。

生活保護の金額は8種類の扶助を足して計算する

生活保護費は、8つに分けられた「扶助(ふじょ)」と呼ばれる項目を合計した金額が基本となります。

生活保護費の中でも最も大きな割合を占めるのが「衣食住」のための項目で、必要に応じて学校で必要な教材費や介護費用なども支給されます。

どのような資金的な援助が受けられるのか、表にまとめました。

  概要
生活扶助 食費、被服費、光熱費など日常生活を送るために必要な費用
住宅扶助 賃貸住宅の家賃、または住居の維持や補修に必要な費用
教育扶助 義務教育で必要な学用品、通学用品、学校給食の費用
医療扶助 処方箋薬や診療費、治療費など医療サービスの費用(本人負担なし)
介護扶助 施設介護や日常生活支援、福祉用具の購入費用(本人負担なし)
出産扶助 分娩前後の処置や介助など、定められた範囲で実費支給
生業扶助 就労に必要な技能の習得、必要な道具の購入費用などを実費支給
葬祭扶助 葬祭や火葬、納骨に必要な費用を実費支給

日常生活に必要な費用は「生活扶助」としてまとめられ、その中でさらに食費や被服費にあたる第1類と光熱費などの第2類に分けられます。

参照:生活扶助基準額について

また働くための準備費用や出産・葬祭といったイレギュラーな費用は、生活扶助と別の項目となっており都度支給される仕組みです。

子どもがいる家庭でも、義務教育にかかる費用は生活扶助とは別に項目が設定されているので、学用品が準備できないといった心配もありません。

医療費も実質無料となるので、病気で働けず医療費が家計を圧迫していた人は生活がかなり楽になるはずです。

生活扶助の基準額は地域によって異なる

生活保護費のうち大きな割合を占める生活扶助(生活費用)と住居扶助(家賃)は、年齢や地域によって金額が異なります。

地域によって物価や地価に差があることから、基本的に東京や政令指定都などの都市部では基準額が上がる傾向です。

地域は級地として区分され、1級地-1から3級地-2までの6つに区分されています。

全国の県庁所在地を参考に、どれくらいの級地に属するのか確認してみましょう。

1級地-1 東京23区、さいたま市、横浜市、名古屋市、大阪市、京都市、神戸市
1級地-2 札幌市、仙台市、千葉市、大津市、岡山市、広島市、福岡市
2級地-1 青森市、山形市、盛岡市、秋田市、福島市、水戸市、宇都宮市、前橋市、甲府市、新潟市、富山市、金沢市、福井市、長野市、静岡市、岐阜市、津市、奈良市、和歌山市、鳥取市、松江市、山口市、徳島市、高松市、高知市、松山市、佐賀市、長崎市、大分市、熊本市、鹿児島市、宮崎市、那覇市

2級地-1までにはすべての県庁所在地が入っており、その他の地方都市の多くは3級-1に分類されています。

県庁所在地以外の級地は、以下の一覧表で確認可能です。

自身が住んでいる級地を確認しないと計算が難しいため、まずは住んでいる地域がどの級地に該当するかを調べてみましょう。

生活扶助の基準額は級地によってどれくらい差がある?参考金額をチェック

生活扶助が級地によりどの程度変わるのか、例として被服費や食費にあたる生活扶助基準(第1類)の基準額①で比較しました。

1級地-1 1級地-2 2級地-1 2級地-2 3級地-1 3級地-2
42,020円 40,140円 38,240円 36,350円 34,460円 32,570円

住んでいる地域だけで比較しても、最大4,000円程度差があるのが分かります。

世帯人員が増えるほど差が開くので、試算する際は必ず住んでいる自治体がどの級地に該当するのかを確かめましょう。

また、住居扶助に関しても級地別で定められていて、単身世帯の場合は以下の金額内で家賃援助が受けられます。

1級地 2級地 3級地
53,700円 45,000円 40,900円

世帯人数が増えると逓減率がかけられる

生活扶助基準(第1類)の基準額では1人あたりに必要な食費・被服費が定められていますが、世帯人数が多いと計算は単純な掛け算だけでは終わりません。

世帯人数が増えると、その分逓減率(ていげんりつ)を掛ける必要があり、1人あたりが受給できる保護費は少なくなります。

例えば1級地-1に住む30代夫婦+4歳子どもの3人家族の場合、第1類の基準額②をもとに足し算すると以下の金額が算出できます。

42,020円×2人+27,490円=111,530円

基準額②の場合は、この金額に3人世帯の逓減率(ていげんりつ)0.7151をかけます。

111,530円×0.7151=79,755円

世帯人数が増えると節約できる部分が出てくるため、人数が増えてもそのまま100%の金額で支給されない点に注意しましょう。

母子世帯・障害者世帯には加算がある

母子世帯や障害者世帯の場合、8つの扶助に加えて独自の加算があります。

母子世帯は子どもの人数に応じた加算に加え、児童1人につき10,190円が加えられるので、お金がかかりがちな子育て世帯の出費をカバー。

障害者の場合は障害程度等級によって加算額が異なり、15,000円以上が毎月の生活保護費に加えられます。

どちらか一方の加算のみしかできませんが、教育や介護の扶助は別であるため苦しい生活を強いられることはないでしょう。

この他、寒冷地では冬季に暖房費として冬季加算があるなど、きめ細かく最低限の生活を保障する下地が整っています。

生活保護は何日で支給される?申請から受け取りまでの手順

生活保護は、申請したその日に審査が終わって支給されるものではありません。

相談・申請してから審査を経て支給されるまではある程度日数がかかるので、本当に苦しい状態になる前に相談できるのがベストです。

ここでは相談から支給までの流れについて、順を追って解説します。

  1. 自治体の福祉事務所で相談・申請
  2. 家庭訪問や資産、就労状況などの調査(審査)
  3. 生活保護の受給決定

受給の流れ①:自治体の福祉事務所で生活保護の相談・申請を行う

生活保護を受給するには、まず住んでいる自治体の福祉事務所で「相談・申請」を行う必要があります。

特徴的なのは申請前に、生活保護を受給しても問題ないか「相談」を行わなければならない点。

申請をしたら誰もが受給できるわけでなく、最初の相談で以下をチェックされます。

  • 生活保護を必要とする理由
  • 生活に困窮している証拠
  • 生活保護以外に利用できる支援制度がないかどうか
収入や資産が分かる書類を用意しておこう

相談・申請にあたって提出しなくてはならない書類は特にありませんが、生活に困っていることを証明できる以下のような書類があれば、持参しておくと担当者に伝わりやすくなるでしょう。

  • 離職票
  • 給与明細
  • 雇用保険受給資格者証
  • 障害者手帳
  • 通院記録など

生活が困窮している状態や、その原因がケースワーカーにも分かるようできるだけ多く書類を用意できると、手続きそのものだけでなく担当者の指導も的確に行えます。

相談に行くと、生活保護だけでなく他の自立支援制度や社会保障の利用などについても提案があり、他にいい方法が見つかる可能性もあるため、自身の現状を伝えやすい状態を作っておくのが生活保護受給のコツです。

生活保護の相談・申請は福祉事務所へ行く必要がある

生活保護の申請は、各自治体にある福祉事務所が窓口となっています。

福祉事務所を置く自治体数は906箇所(事務所数は1,250箇所)にも及び、都道府県及び市では設置が義務付けられているので比較的見つけやすいです。

生活保護の申請の多くは、市役所の生活支援課や健康福祉センターなどで受け付けています。

突然行っても担当者が不在で相談できない可能性があるため、あらかじめ電話や問い合わせフォームを利用して相談日時の予約を取りましょう。

受給の流れ②:家庭訪問や資産、就労状況などの調査

生活保護を申請すると、保護の必要が本当にあるかどうかを見極めるため多方面から審査が行われます。

主に行われるのは以下のような調査です。

調査内容 目的
家庭訪問 実際に家庭へ訪問し、生活状況の確認を行う
扶養照会 戸籍謄本を調査し、扶養家族の確認を行う
扶養照会 戸籍謄本を調査し、扶養家族の確認を行う
資産調査 銀行や生命保険会社を調査し、売却できる資産がないかの確認を行う

調査では協力的な姿勢で臨み、ごまかしたり嘘をついたりしないようにすることが審査通過のポイントです。

調査にあたり、通帳の写しや給与明細、契約中の保険証書、賃貸住宅なら家賃が分かる書類を準備しておくといいでしょう。

また病気やケガを理由に生活保護を受けるなら、医師の診断書は調査までに用意しておくのがおすすめです。

受給の流れ③:生活保護の受給決定

相談・申請・数々の調査を経て、審査に通ると生活保護の受給が決定となります。

生活保護の受給決定は、自治体にもよりますが「保護開始決定通知書」や「支給金額決定通知書」といった書面で郵送されるのが一般的です。

保護開始決定通知書には、受給の開始日や受給金額、保護の決定理由等が記載されているため、確認しておきましょう。

なお審査の結果、生活保護の受給が却下された場合は「保護却下決定通知書」と呼ばれる書面が送付されます。

生活保護の申請には回数制限がないため、却下を不服とする場合は翌日にでも生活保護を再申請できます。ただし生活保護の受給が却下となった理由を解消しないと、何度申請しても審査には通りません。

保護却下決定通知書には、生活保護が却下となった理由が記載されているため、生活保護を受けられない理由を解消してから再申請しましょう。

生活保護支給までの目安は14日以内

生活保護の審査では数々の機関へ照会や調査が行われるため、結果が出るのは一般的に申し込みから14日以内です。

ただし調査が難航して時間がかかる場合もあり、最長で30日以上かかる場合も。

その間に困窮して食べ物にも困る状態なら、各自治体の社会福祉協議会が窓口となっている「臨時特例つなぎ資金貸付」を利用できる場合があります。

10万円まで無利子の貸付で、公的な給付や貸付までの間に困窮しそうな人が対象です。

貸付のため返済が必要ではありますが、生活保護を受けるまでの生活費も不足している場合は利用を検討してみましょう。

臨時特例つなぎ資金貸付は返済期日が比較的早く、例えば静岡県社会福祉協議会では1ヶ月以内の全額返済を条件としています。初月に支給される生活保護費は原則として現金手渡しとなっているため、貸付を利用するなら他で使わず優先的に返済を行いましょう。

生活保護から脱却できると就労自立給付金が支給される

生活保護は社会のセーフティーネットとしての役割のほか、就労可能な人の自立を支援する役割もあります。

生活保護からの脱却には本人の努力は必要不可欠で、脱却後の生活に不安を持つ人も少なくありません。

そこで脱却できた際のインセンティブと脱却直後の不安定な生活を支える目的で、就労自立給付金の支給制度があります。

金額は単身世帯で上限10万円(複数人がいる世帯なら上限15万円)で、安定して収入が得られる目処が立ったことが支給条件です。

なお給付金は生活保護の受給停止で自動的にもらえるのではなく、所定の様式に従った申請書を提出する必要があります。

自立に向けて動く際は、ケースワーカーや生活保護担当窓口に申請について確認してみましょう。

生活保護受給中にしてはいけないこと4つ!不正受給に要注意

生活保護は生活に困窮している人を救う制度ですが、税金が財源となっている分、してはいけないことも存在します。

保護費の使い方によっては不正受給とみなされ、生活保護の打ち切りや保護費の返還、罰金刑など大きな代償が発生する可能性も。

受給中特に注意したい以下4つのケースについて解説します。

  1. 世帯収入の増加を隠すと不正受給になる
  2. 投資やギャンブルの儲けを隠してはいけない
  3. 親族からでもお金を借りたら収入とみなされる
  4. 貯蓄型保険には加入できない

世帯収入の増加を隠すと不正受給になる

生活保護を受けている世帯は、世帯収入に変化があれば逐一ケースワーカーに報告しなくてはなりません。

例えば内職で月に1万円の収入を得たり、子どもがアルバイトを始めたりといったことも報告が必要です。

労働収入以外にも、親族からお年玉をもらうなど臨時の収入も報告義務があるため、隠さず正直に申告しましょう。

収入が得られるとその分だけ生活保護費は減額されますが、減らされるのが嫌で収入を隠しておくと不正受給とみなされてしまいます。

投資やギャンブルの儲けを隠してはいけない

生活保護費を利用しての投資やギャンブル自体は禁止されていませんが、儲けが出れば収入となるので申告義務が発生します。

パチンコや競馬も換金した時点で収入となるので、正直に収入額を申告しましょう。

またあまりに派手にギャンブルで遊んでいると、近隣住民からケースワーカーに密告されるといったケースもあります。

特に最近は生活保護の不正受給に対して世間の目が厳しく、どこで誰に見られているか分かりません。

バレた際に隠していた儲けが発覚すると不正受給になるばかりか、保護費の減額や打ち切りにもつながります。

親族からでもお金を借りたら収入とみなされる

収入とみなされるのはもらったお金だけでなく、借りたお金も同様です。

保護費では買えない贅沢品を親族からお金を借りて買ったり、クレジットカードで代わりに支払ってもらったりするのも報告義務があります。

例えばゲーム機を買うのにお金を借りた場合、抜き打ちでやってくるケースワーカーに買った物が見つかれば必ず追求されてバレる可能性が高いです。

援助が見込める親族がいるとして、生活保護費の減額や打ち切りにつながりかねないので、相手が誰でもこっそりお金を借りるのはやめましょう。

貯蓄型の保険には加入できない

死亡時の保障がある終身保険や学資保険などは、資産形成とみなされるため生活保護費の支出としてふさわしくありません。

生活保護の申請時に契約していれば解約を求められているはずなので、こっそり契約を継続していれば指導が入ります。

契約していると毎月指定口座から保険料が引き落とされるので、調査が入った時にバレてしまう可能性が高いです。

学資保険などは特に解約が惜しまれますが、貯蓄型保険の場合は月々の保険料が決して安くないので、まずは現在の生活の立て直しを最優先しましょう。

生活保護受給中に加入できるのは共済などの掛け捨て保険になるものの、医療費は実質無料なので現時点で特に必要性はないともいえます。

申請前に知っておきたい生活保護のデメリット!受給中は制限も多い

生活保護の受給中は何かと「不正受給の可能性」がついてまわります。

財源が税金である以上お金の用途は限られており、ある程度の制限があるのは仕方がない部分です。

生活の保障があるのは最大のメリットですが、受給前に知っておきたいデメリットについても確認しておきましょう。

  1. 贅沢品は購入できない
  2. クレジットカードは持てない
  3. ケースワーカーへの定期的な報告が必要

贅沢品は購入できない

最新のスマホや高級ブランドのバッグなど、最低限の生活に見合わない高額な物は贅沢品とみなされて、ケースワーカーの指導が入ります。

もし指導が入っても贅沢品への支出がやめられない場合、保護費の打ち切りも検討されるので節度ある生活を送りましょう。

例えば「生活保護受給者がゲーム機を保持してはいけない」といった法律はなく、見つかっただけで没収されることはありませんが、ゲーム機があることで生活に支障をきたしていたり仕事に就かなかったりする状況が続くと、ケースワーカーから注意されてしまいます。

物として形に残る以外でも、不必要な外食の繰り返しや旅行なども指導の対象となるので、趣味としている人にとっては少々つらい自制が必要です。

クレジットカードの発行・保持ができない

ネットショッピングやスマホ決済で便利なクレジットカードですが、支払いが後払いとなるため借り入れとみなされて原則利用できません。

また新たに作るにしても、生活保護ではクレジットカードの審査に通らないため、発行自体が難しくなります。

ネットショッピングだと購入できる店舗も限られるため、特に若い世代にとっては不便だと感じるシーンが多いでしょう。

プリペイドカードやデビットカードなら即時支払いで審査がない場合も多いので、生活保護受給中でも利用可能です。

ケースワーカーへの定期的な報告が必要

生活保護の受給を始めると、収入の変化はもちろん、求職活動の状況や生活状況、資産についてなど定期的な報告が必要になります。

細かく収支を報告するほか、抜き打ちの家庭訪問もあるため、面倒だし生活が監視されているようだと感じることは少なくありません。

お金だけもらって生活は完全に自由となるはずがなく、生活態度に問題があれば指導も入るので多少の窮屈感は覚悟はしておきましょう。

生活保護は条件を満たす場合のみ受給できるセーフティーネット

生活保護は、どうしても働けず生活が困窮している人が、文化的な生活を送るための保障です。

財源は税金となるため、資産の売却など生活を維持するための手段をすべて実行済みの状態であることが受給条件となります。

ただし、相談に行って条件に合わないからとただ追い返されるわけではなく、他の社会保障や融資制度を紹介されるなど解決方法を提案される場合も。

闇金に手を出すようなことは決してせず、まずは地域の福祉事務所や自立支援センター、社会福祉協議会などで現状を相談しましょう。

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